10月7日 晴れ

主にHANNIBAL。

【ハンニバル】S1E7:ソルベ

■あらすじ

アカデミーで切り裂き魔について語るウィル。切り裂き魔は”3匹”ずつ殺害し、1年半後にまた別の3匹が殺された。切り裂き魔にとって被害者は人間ではなく、豚であるとウィルは分析する。臓器を切除して食べていることが特徴で、医学の知識があり、残虐である。

そしてミリアム・ラスは被害者の医療記録を調査中に失踪、9人目の被害者と思われたが遺体は発見されず、2年後の現在、犯人の導きによって腕が見つかった。一貫して劇場型の犯罪を繰り広げる切り裂き魔を止めることは出来るのか。

 

一方オペラを鑑賞するレクター博士。涙さえ浮かべてアリアに聞き惚れる彼を見つめる患者フランクリンがいた。昔のようにディナーパーティーを主催して欲しいと知人にせがまれているところに現れた彼は友人のトバイアスを博士に紹介するのだった(彼は次回で重要な役割を果たす)。

 

そんな中事件が起き、ジャックに連れられてウィルは現場へ向かう。切り裂き魔ならあと2人殺して姿を消す、とジャック。ミリアムの腕はあなたへの挑戦、とらわれすぎては駄目だとウィルは助言するが、ジャックはあくまでも切り裂き魔が犯行を再開したと考える。

 

《今回の殺人事件:切り裂き魔を思わせる惨殺事件》

手術を施し、さらにその縫合箇所を手で開いているかのような残虐な犯行で、腎臓が奪われている。

ウィルの見立てでは鎮静剤を飲まされている内に腎臓を奪われた被害者は目を覚まして犯人と格闘、心臓が止まったのを助けようと犯人は胸を切り開いて直接マッサージを施した。

 

これは殺しではなく、命を助けようとしたもの。切り裂き魔の犯行ではなく医学生か何かが闇医者の真似をして臓器を取り出し失敗しただけだとウィルはプロファイリングする。

 

※ウィルが見立てる切り裂き魔(リッパー):

・病院で生まれてすぐ見放された可哀想な存在、周りは必要最低限の世話しかせず見殺しにしようとしたが生き残った。

・一見まともに見える、正体は誰も知らない。

 

レクター博士のセラピー(患者として&医師として)>

美しき精神科医のもとへ患者としてセラピーを受けに行く博士。「あなたはよく出来た仮面、というより人の皮を被っている」と言われる。自らの患者に「友人ではない」と告げたのと同様に、彼女からも「患者と医者であって友人ではない」と告げられるのだった。

 

その後やってくるウィルと、今度は医師としてセラピーを行いつつ「私は君の精神科医なのか(友人なのか)?」と尋ねてワインを一杯開ける。赤でも白でもなくロゼが今日の博士の気分らしい。白黒(医師と患者/友人)をつけないということか。

2人はセラピーでまた事件の分析をし、博士の助言でウィルは「臓器移植(のための売買)」の可能性に思い至る。一方博士は久々の晩餐会の支度にとりかかり、「食材」と「レシピ」を捜すのだった。

 

<第二~以降の殺人事件>

スクールバスの中で、上下まっぷたつに切断された遺体が発見される。腎臓と心臓を切除されており、前回の事件のやり直しだと見立てる局員達にウィルは別人の犯行だと見立てる。こちらは切り裂き魔の仕業だと。

 

さらに凶行は続き、それぞれ違う臓器(肝臓や胃や膵臓、肺、脾臓まで)が奪われた複数の遺体が発見され捜査は暗礁に乗り上げる。臓器売買と見立てたのは誤りだったのか。ウィルは今回犯人は2人いて、少なくとも片方は切り裂き魔であると分析する。

 

レクター博士とウィル>

セラピーの時間を忘れていたウィルをFBIアカデミーまで迎えに行く博士。目を開けたままアビゲイルの白昼夢を見るウィル。悪夢の原因は殺人事件だと博士は言う。「無礼な行いへの報い」「臓器を取ったのは分不相応だから」という分析で切り裂き魔への2人の意見は一致する。一方ミリアムの腕については彼女自身でなく、ジャックを嘲笑っているのだと。効果はてきめんだった。

 

<事件の結末>

事件の一報を聞いて去る民間の救急車の映像が発見される。犯人とみなしてウィルとレクター博士はジャックらと共に該当の救急車を追い、腎臓を奪おうとしていた犯行の現場を目撃する。犯人は医学生だった。居合わせたレクター博士が止血を行い、最後の被害者の命は助かる。

 

事件が終わり、犯人シルベストリと切り裂き魔は無関係であること、患者が助かったことを告げて博士の晩餐会を辞するウィルと、その背中を満足気に見送るレクター博士だった。そうして、残酷な晩餐会は大盛況のうちに開かれる。

  

***

 

サイコパスに好かれるといえばウィルの特技であるが(本人は大迷惑)、今回は博士にもストーカーやファンが目立つ第7話。オペラに聞き惚れる姿は美しい。2年前以前の切り裂き魔の犯行を説明するウィルのシーンの後に「昔はよく素敵なパーティーを開いてくれた」と友人に言わせるのが恐ろしくも品の良い演出である。今回は料理シーンも多く、博士の美しい姿を堪能できる。

 

普段はウィルに友人になろうオーラ全開で擦り寄っている博士が「外でのあなたを知りたい、友達になりたい」とせがむ患者に(ウィルの時とは正反対で)距離を取り露骨に迷惑そうな顔をするのも面白いシーン。

 

「切り裂き魔は被害者の舌を切り落として聖書のしおりに挟むような奴」「残酷さの中にも気品があって優雅だ」というウィルの詩的かつグロテスクな表現が印象的。彼はこうして犯人を抽象的かつ具体的に共感してプロファイルしているため、今回の事件にはそんな印象がない→切り裂き魔の犯行ではないと唯一見抜くことが出来る。

本来なら現場に出るべきではない繊細な神経の持ち主なのに、だからジャックが手放さないのが切なくも狂おしいところだ。このシリーズは善を求めるジャックと堕天使であるレクター博士が純粋なウィルを引っ張り合う物語でもある。

 

また今回、本筋には直接関係ないがアラーナがレクター博士の料理を手伝いながら会話するシーンがあり、ウィルの話題に触れないようにしたり「彼の存在を隠していた?」と尋ねたり、「生徒には昔(君のことを)恋人だと思われた」など、巧みに人心を操る博士の会話術が堪能できる。それにしても例の「無礼な豚名刺リスト」にだけは入れられたくないものである。

 

そしてウィルがセラピーの約束の時間に少し遅れただけでそわそわするレクター博士。こういうところがあるから憎めないのであった。