10月7日 晴れ

主にHANNIBAL。

【ハンニバル】S1E9:トゥルー・ノルマン

■あらすじ

海辺で異様な殺人事件が発生し、ウィルはジャックらとともに現場へ向かう。

 

《今回の殺人事件:人間トーテムポール事件》

17体の遺体を組み合わせて高く積み上げた異常なオブジェが浜で見つかる。それは何十年と経っている遺体からつい最近殺されたものまで、組み立てて「晒し者」にしたおぞましい猟奇殺人だった。

これは元から計画され、前もって「材料」を用意してピースを組み立て、犯人が独自の秩序をもたらしたもの。最後の被害者は生かしておき、彼に制作過程と作品を見せたかったのだとウィルは分析する。

 

<ウィルとレクター博士

これを「履歴書」「集大成」「後世に残す遺産」とプロファイリングするウィルは無意識の内にハンニバル・レクター博士の診療所まで押しかけるという解離症状を発症してしまう。

人と共感する能力のせいで参っている、やめる機会はあったのにとウィルを心配するレクター博士。「現実から離れていっている」と指摘され、ウィルは夢遊病・幻覚・解離症状に苦しみ脳の検査を必要とするが博士はそれは間違いだと事件に話を引き戻すのだった。

 ※ここでも博士はウィルを深く心配しながら「ジャックに言われるがままに現場に出てしまっている」「意識がない間に誰かを傷つけるかも」と彼を操る布石をいくつも打っている。

 

問題があるなら俺に話せ、とジャックに言われても「すべて順調」としか言えないウィル。

 

<アビゲイルの苦悩>

自分を殺さないために父は女の子を何人も殺して食べていた、私の何がいけなかったのかとアビゲイルは悩み、ニコラス・ボイルを含む被害者達の悪夢を見る。

 被害者の遺族が訴訟を起こしたため、家を含む資産はすべて没収されるはずだとアビゲイルに病院で告げるラウンズ記者。アビゲイルに父のことを本にするべきだ、真実を伝えようと語りかけ、アビゲイルはすべてを話すことを決意する。

 

<事件のプロファイル>

砂浜に埋まっていたものも含め、すべての遺体(17人)を他殺だと断定するウィル。自殺や事故に見せかけているものもあり、犯人にとっっては「死んだという事実」「誰にも気づかれないこと」が重要であり方法は関係がないとウィルは分析し、一番上に飾られていた人物が今になって犯人が光の当たる場に出てきたことの鍵を握っていると見立てる。

一番下の遺体が最初の犯行、なんと40年前から犯人は捕まることなく殺し続けていた。一番上の遺体ジョエルと一番下のフレッチャーには何らかの接点があるはずと。

 

そんな中、キスを交わした夜に帰ってしまったことを謝りにアラーナがやってくる。ウィルが不安定であることを理由に「あなたのことは好きでも、あなたとは付き合えない」と語る。不安定である自覚を抱えているウィルは黙ってアラーナのハグを受け入れるしかなかった。

 

<アビゲイルとウィルとハンニバル、そしてニックの遺体>

本を書くというアビゲイルに反対する2人。「君は大切な存在だ」と語るウィルに「パパを殺したからってパパになる必要はない、許可もいらない」とアビゲイルは反発する。皆に共犯だと思われているのが耐えられないのだと言う彼女に、「一度扉を開ければとてつもない嵐が君を襲う」と博士はたしなめる。

 

その直後、腹を裂かれて死んでいるニコラス・ボイルの遺体が凍った地面の中から発見される。ジャックは遺体をアビゲイルに見せて確認させると言い張るがアラーナは断固反対する。

アビゲイルはニコラスの遺体を確認させられ、ジャックに問いつめられる。病院を抜けだして独りになっていたことを認めるが、彼の死と自分は関係ない(殺されかけただけ)と言い張る。彼女が帰った後、アラーナはハンニバルが信じ続ける限り自分もアビゲイルを信じるのだとジャックに告げるのだった。

 

遺体を掘り返したのはアビゲイルだった。もうニコラスの遺体が見つかることに怯えずに済む、と語る彼女に「信頼を裏切り、私を危険に晒すのはひどい仕打ちだ」と伝えるレクター博士

 

<事件の捜査と結末>

頂上のジョエルの父親は一番下のフレッチャー、だが鑑定の結果実の息子ではなかった。母親も自動車事故で死んでいるがトーテムポールにはされていない。当時の容疑者の元を訪れるジャックとウィル、そこには捜査員を待っている老人の姿があった。

 

「あれを最後にしてよかった、もうこれ以上は戦えない」と17人の殺害を認める老人。ジョエルを殺したのは生きる資格が無いからだ、他にもそれぞれ彼らの知らない理由があったと老人は語る。誰も知らない殺人に成功し、静謐な葬式に出るのはなんとも言えない美しさがあると陶酔したように語る老人は刑務所なら忘れ去られることもない、自分の遺産を後世に残すことが出来たと。 

犯人はフレッチャーの妻と不倫しており、ジョエルは犯人の子供だった。けれど彼はそれを知らず、フレッチャーの子をみごもったとして妻も夫も子も殺した。「本当の遺産を自分の手で殺してしまったな」と吐き捨てるジャックとウィルだった。

 

<ウィルと博士(とアビゲイル)>

ニコラスの遺体を前に、犯人に同化したウィルはこれがアビゲイルの犯行であることを悟る。そしてレクター博士にそれを告げると「知っている。遺体を隠すのを手伝った」と言われるがジャックには話さない。

 

「我々が父親だ、彼女を理解しホッブズの代わりに彼女を守る」と断言するレクター博士。ジャックに話せば彼女の未来はない、弁護士を呼ぶべきかと言う彼にウィルは何も言えず、そんなウィルの肩に手を置いて「黙っておこう、我々は間違っていない」と博士は語るのだった。

 

<恐ろしいディナー>

アビゲイル、ラウンズ(ベジタリアン。幸せなことである)、ウィルはレクター博士とギスギスしたディナーの場を囲む。「アビゲイルから見た真実を伝えたいの」と言うラウンズに博士はあくまで誠実に「アビゲイルを守りたい気持ちを理解して欲しい」と告げる。

 

ウィルも自分がニコラスを殺したことを知っている、と博士に知らされるアビゲイルはまたも思い悩む。「君は自由だ、ウィルはジャックにも自分にも嘘をつくだろう」と博士は寄り添い、「君自身を認められないんだね」と囁くと、アビゲイルはこう言う。

「パパを手伝った。パパの正体も、何をしていたのかも知ってた」と。

アビゲイル自身が、被害者の少女たちをおびき寄せる手伝いをしていたのだ。「私は怪物よ」そんな彼女に博士は「真の怪物を知っている。ウィルと一緒に君を守るよ」と優しく抱きしめて告げるのだった。

 

*****

 

人間トーテムポールという衝撃的な作品が出てくるも、実際の話の筋はアビゲイルが主軸となる第9話。ポイントは「遺体」「親子」だろうか。犯人は遺体で記念碑を作り、アビゲイルは自らの罪の呵責に耐え切れず遺体を掘り返した。そして擬似親子と本物の親子が入り組んだ関係は事件もアビゲイル・ウィル・レクター博士も同じである。

 

「ウィルは私を避けてる、父親の気分になるから」をラウンズは「殺人者の気持ちに同化してしまう」ととったけれど、それだけではないだろう。

ウィルはアビゲイルに近づけば食人鬼になると同時に彼を殺した時の爽快な気分を思い出し、また父親を奪ってしまった代わりに自分が父親になろうという気分にもなるのではないか。この辺りの複雑さがS2まで持ち越されるのがこのドラマの面白いところである。

 

そして今回大きな動きを見せるアビゲイルと博士、ますます擬似親子の様相を呈してくる美しい共犯関係から目が離せないが、毎回何を考えているのか言ってることと後日明らかになる真相が違いすぎて博士は本当に怖い(素敵)。

 

 ※今回も吹替で見ながらまとめたけど、字幕で追えないとついつい全文書き起こしみたいに長くなってしまった。やっぱり字幕にするべきか。でも井上さんの博士ボイス素敵なんですよね…