10月7日 晴れ

主にHANNIBAL。

【ハンニバル】S1E12:ルルヴェ

■あらすじ

「いつか(心を病んで)人を傷つけるかも」というレクター博士の予言通りにギデオンを撃ち、原因不明の高熱で入院しているウィルのもとへレクター博士烏骨鶏のスープを手作りして届ける。ジャックにはまだウィルがそこまで深刻な状態であることは伝えていない博士であった。

一方ジョージアは物音で目覚め、酸素カプセルの中にあった櫛で髪をとく。するとその静電気で火がつき、カプセルの中で彼女は人知れず焼死する。

 

《今回の事件:自殺?事故?ジョージアの焼死》

高濃度酸素カプセルの中で焼死したジョージアは、静電気防止用のブレスレットを外していた。殺人の容疑者である彼女が自殺したと考えるジャックらに、ウィルは彼女は自殺ではないと分析する。

 

<ラウンズ記者とアビゲイル>

アビゲイルの本について打ち合わせを続けるふたり。キャシー・ボイルとマリッサの死もまた父のせいだと語るアビゲイルに、ではニコラス・ボイルの死は誰のせいかとラウンズは問う(実際にはアビゲイルが殺している)。彼はただのお子様、殺人鬼ではないと見抜いていたのだ。

「殺人者には独特の敵意がある、ウィルに会う度それを感じる」と語るラウンズ、「ニック殺しも彼では? 模倣犯扱いされたあとでニックは無実なのに殺された」と彼女は見立て、アビゲイルは怖れる。

 

<ウィルの精神状態の悪化>

家に戻ってもジョージアの悪夢を見るウィル(いい加減パンツ1枚はやめたらしく下を履いている)。目の前でジョージアの身体は牡鹿の角に突き刺され燃え尽きるのだった。

夢から覚めたウィルはジャックの元を訪れ、「ジョージアはサトクリフ医師を殺した犯人に殺された」と分析するがジャックは信じず2人は衝突する。(医師の遺体にはジョージアのDNAがあったため、彼女が殺したとみなされている)

 

<ジョージアの死、そしてサトクリフ医師の殺害について:模倣犯の存在>

カプセル装置に使われていないプラスチックの残骸が見つかり、おそらく、それが凶器だと見立てるウィル。

さらにサトクリフ医師の殺害についても、一度目の被害者(第11話で殺された女性)の手口を真似しているものの微妙に異なる(顎をほぼ切除している)ことを指摘し、「マリッサやキャシーを(ホッブズの手口を真似て)殺したのと同じ模倣犯」のしわざだと大胆なプロファイリングを披露する。顔を見られたからジョージアも殺したと。

ニコラスは模倣犯ではなかったという分析に、ジャックはウィルの精神状態を心配してレクター博士に相談する。「彼は我を失っている」「心の病だとしても支えよう」と博士はウィルの不安定さと精神病を否定しない。

 

※実際にはウィルの見立ての通り、レクター博士が「ミネソタの百舌」ホッブズの手口を模倣してキャシー・ボイルとマリッサを串刺しにしており、更に今回はジョージアの手口を真似てサトクリフ医師を殺している。

 

<ベデリア先生とジャックとレクター博士

ジャックはレクター博士が事件の情報を隠しているのではないかと考え、彼の精神科医であるベデリア女史のもとを訪れる。

「彼が危険だとは思わない、ウィルとの関係を知りたい(どういう意味だよ)」と迫るジャックに守秘義務違反だとベデリア先生は断る。「彼は患者、特にウィルのためにどこまでやると思う?」という問いに、「ウィルは患者というより友人だと言っていた、友人は少ないから誠実に向き合うはず。ウィルを助けたいのよ」と彼女は答えるのだった。

その後彼女がレクター博士に、ジャックがここにきたこと、ウィルに関する博士の話が本当かどうかを確かめに来たと告げると、博士はジャックがアビゲイルは父と共犯であり、それを知っているウィルを博士がかばっていると考えているのだろうと推察する。そんな博士に、「ウィルにしていることはやめるべき、仕事の範囲を超えている」とベデリア先生は忠告するのだった。

 

<ウィルとアビゲイル、レクター博士

ホッブズ模倣犯にはつながりがあった、というウィルの仮設に立ち、改めてホッブズの足取りを追う捜査班。

一方アビゲイルは「ニコラスを殺した時いい気分だった」と病院でウィルに打ち明ける。ウィルもまた、彼女の父である殺人鬼ホッブスを殺した時には力を感じた(出た、レクター理論)と認める。ふたりはある意味ではまだホッブズにとらわれており、きっと模倣犯を捕まえてみせるとウィルは語る。「だが、君の手助けがいる」と。

その後、一時的に熱が下がり「ようやく模倣犯のことがわかってきた」とセラピーでレクター博士にウィルは語る。模倣犯捜査の状況を詳しく知ることが出来る人物(「君のような?」と博士には言われる)であり、今の狙いは自分。すべてはホッブズへの電話が始まりだと。アビゲイルをミネソタに連れて行くと言うウィルに博士は反対する。そう、模倣犯は彼であり、今回もウィルの見立ては当たっているのだ。

 

<アビゲイルへの捜査とウィルの行動>

捜査班はホッブズが獲物を物色するときには娘を連れて行き、彼女が囮になっていたのだと見抜く。さらには彼女自身が模倣犯ではないかとさえ考え、ジャックはアビゲイルを訪ねる。すると彼女はウィルにこっそりと連れだされており、そこにはラウンズ記者がいた。

アビゲイルを連れ去ったウィルの考えを探りに訪れたジャックに、ウィルは記憶をなくしてしばしば別の人格になっているレクター博士は告白する(恐ろしい策略である)。そしてジャックはマリッサ・ジョージア・サトクリフの殺害時にウィルにアリバイがなく、乖離した時はホッブズの人格に近づいているというレクター博士の証言を耳にするのだった。つまり、ウィルはホッブズが殺そうとしたアビゲイルを殺すつもりなのではないかと。

 

<アビゲイルとウィルのミネソタ行き>

ウィルはアビゲイルをミネソタにあるホッブズの狩猟小屋へ連れて行く。鹿の角に覆われたその場所で、自分は少女達をおびき寄せるおとりだったと打ち明けるアビゲイルを殺す幻影を見て高熱に浮かされるウィル。

「君は父親と共犯だった、君か君がよく知る相手が模倣犯では」「あなたこそ模倣犯じゃないの」と言い合ううちに意識を失い、気がつくとウィルはひとりで飛行機の中にいた

 

<アビゲイルとレクター博士

様子のおかしいウィルを小屋に置き去りにして自宅に戻ったアビゲイルを待っていたのはレクター博士だった。抱きしめて「君が心配だった」と囁く博士。

「ウィルは家に電話した人が犯人だと言ってたわ」なぜ父に電話したの、と尋ねるアビゲイルに、博士は「どうなるか興味があった。マリッサを殺した時も君がどうするか知りたかった」と告げる。そう、父親と同類でニコラスを殺すか観察したかったのだ。すべてを知ったアビゲイルは尋ねる。

 

「今までに何人殺したの?」

「君のお父さんよりも多く」

「私も殺すの?」

「すまない、アビゲイル。君を守れなかった」

 

優しく頬に触れるレクター博士の指、アビゲイルは逃げられない。

 

*****

 

冒頭から友人としてウィルに尽くす博士が見所の第12話。ここまで姿の見えなかったすべての事件の「模倣犯」を一つに繋げるウィルの見立てが見事な一方、余裕で掬ったスープに息を吹きまわしかける博士のしぐさが優雅である。

ずっと治療と戦い、原因のわからぬ病で誤解されてきたジョージアのために「自殺なんかじゃない、彼女の死まで誤解させたくない」とひとり闘うウィルが健気だが切ない。もはや誰もウィルを健常な状態として扱ってくれないのだ。ウィルは脳炎であることを知っているのはもはやレクター博士だけであり、完全に精神がおかしいひとだと思われているのが不憫である。

 

そして今回久々登場の麗しのベデリア先生、S2まで見てから振り返ると、レクター博士の患者だった男がかつて彼女を襲ったのもまた、巧みに博士が操った結果なのだろうと思えて恐ろしい。「博士のような友人を持つことはウィルのためになる」というこの時点での彼女の分析は、結論から言えばやはりレクター博士の支配下にあるがゆえの見立てにすぎないのだから。

あくまで誠実な友人たろうとする姿を見せるレクター博士、セラピーでウィルから離れつように言われて取り乱したように見える姿でさえすべては彼の計算である。

 

ウィルを精神を病んだ殺人犯に仕立てる見えない包囲網(レクター博士が巧妙に編んだ網)が狭まっていく第12話、次回がシリーズ1の最終回。ここに至るまでに博士が綿密に計算して行動してきたことを振り返ると本当に恐ろしい物語である。ウィルちゃん頑張れ。