10月7日 晴れ

主にHANNIBAL。

【ハンニバル】S1E5:コキーユ

■あらすじ

現場に出るようになってからウィルの精神は混乱し(大いにハンニバルのせいでもあるが)ついに夢遊病に苛まれるようになる。大きな黒い牡鹿の幻影を見ながら彷徨っているところを発見され、自身の異常を恐れた彼は早朝からハンニバル・レクター博士の自宅兼診療所を訪ねる。

 

トラウマが身体の制御を奪っている、と分析する博士。現場に出るようになったせい、と遠回しにジャックの責任を囁くのであった。

 

《今回の殺人事件:天使に見立てた「エンジェルメイカー」事件》

死体に加工を施し、背中を切り裂いて翼に見立てて広げ、祈りを捧げる形にした異常な殺害現場が発見される。釣り針で天井から身体と翼を固定しており、発見された遺体は男女2体。

現場の吐瀉物の分析から、犯人は脳腫瘍であり寝ている間の死を恐れている、見守ってもらうために殺した被害者たちを変身させて”天使”に高め、眠る自分のために祈らせたのだとウィルは分析する。

 

<クロフォード夫妻と博士>

美しい妻ベラを伴って博士の食卓に招かれるジャック。(そのフォアグラは何の肝臓なのか…「傲慢な豚を使った」という台詞が怖すぎる)早速勝手に人の匂いを嗅ぐ博士は匂いで彼女の病気(肺癌)にひそかに気づくのだった。そして後日、夫人ベラは博士のもとへ患者として訪れる。

 

<博士とウィル>

脳に腫瘍が起きると幻覚を見ることはある。しかしエンジェルメイカーは死に抵抗し神になろうとしているとふたりは分析する。ここでも「君にも見捨てられた経験が? ジャックやFBIに何を期待した?」と事件を通してウィルの心を少しづつ操る博士。「ジャックには見捨てられていない」と語るウィルに対し、「深入りさせないと言ったのに君を制御できていない」、だから夢遊病になったのではと囁くのだった。

 

※博士の狙い:セラピーを通してウィルからジャックへの絶対的な信頼にヒビを入れることと思われる。 ウィルに「彼から遠ざける気ですか」と反論されるとあっさり「犯人を分析する手助けさ」と話をそらす辺り相変わらず絶妙である。

 

<さらなる被害者、ジャックとの行き違い>

そうして第二の殺人事件がエンジェルメイカーによって起きる。吊るされた遺体のそばに犯人のものと思われる睾丸が摘出されており、自らを性別のない天使にしようとしているのではないかと分析している最中、現場でついに「自分でも分析したらどうだ」とジャックと揉めるウィル。博士のセラピーの(悪い)効果が現れているのか。

 

その後第一の事件の被害者夫婦は悪名高き指名手配犯、第二の被害者も重罪犯だったことが判明する。犯人は神の仕事をしているとウィルは分析する。悪魔から天使を作り、その場で安らいで眠るのだ。

 

<再び博士とウィル>

ウィルの夢遊病は悪化し、目覚めれば屋根の上に佇んでいた。博士のもとを訪れ、また事件の話になる。犯人は善悪を見分けられる(と思い込んでいる)。脳が彼に悪さをしていると語るウィルに、犯人と君は似ている、ふたりとも無限の安らぎを求めていると博士は言い、そっとウィルに背後から近づいて彼の匂いを嗅ぐのだった。安物のローションの香り、よく頭痛がするだろうから変えてみてはと囁く博士だった。意味不明もここに極まる。

 

<事件の結末>

ついにエンジェルメイカーの容疑者を突き止めるジャック達(毎度どこから見つけるのかが謎だが影で頑張っているのだろう)。釣りのライセンスを持つ男、病で独りになりたがり家族を遠ざけたエリックだった。(その話を聞きながら自らの妻にも当てはまることに気づくジャックが可哀想である)

妻の話から、子供の頃彼が火事にあい、「天使に守られた」と語っていた農場へと向かうジャックとウィルは、そこで彼自身が天使となって死んでいるのを見つけるのだった。

 

現場でこれ以上は自分に悪影響が大きすぎるとジャックに打ち明けるウィル。では教室に戻るのか、防げたはずの事件が起きたら辛いぞ、辞めたいのなら辞めろと非情に宣告するジャックだったが、妻の病の真実と彼女の考えを知り、戻ってきたウィルを受け入れる。

 

***

 

アビゲイルとアラーナは一回休み、代わりにジャックと病気を隠している妻、そしてジャックとウィル(に溝を作らせようとする博士)の関係が事件の傍ら進みます。「家族」がテーマだった前回に続き、今回は「病」「孤独」。自らの不治の病気を知った人間は独りになりたがるものなのか。

 

冒頭から夢遊病(クソ寒そうなのに相変わらずTシャツとパンツ1枚)のウィルを心配してついてきているウィンストンがめちゃめちゃかわいい第5話。そして最大の見所、寝起き(!)のレクター博士下ろした前髪とローブ姿、ここだけで100万ドルの価値がある回である。人の迷惑を顧みないウィル。

この時も「ジャックは自分を大切な客人に出す壊れやすいティーカップに例えるけれど、古いマグカップになったような気分だ」とぼやくウィルに、それは悪魔(=ジャック)と契約したせいだ、と囁くレクター博士、相変わらず細かいポイントで疑念や考えを植え付けていくのが上手である。今回にかぎらずセラピーのシーンはあまりにも静かかつ巧妙すぎて何度見ても飽きることがなく新しい発見があります。

 

そして伝説の背後から匂い嗅いどいてローション言い当てる事件、本当に恐ろしい男である。