10月7日 晴れ

主にHANNIBAL。

【ハンニバル】S1E8:フロマージュ

■あらすじ

弦楽器店を営むトバイアス人間の腸を使って特別な弦を制作していた。その友人であるレクター博士の患者フランクリンはトバイアスをサイコパスではないかと訝しみレクター博士に相談する。

 

《今回の事件:人間チェロのセレナーデ》

楽団員のトロンボーン奏者が後頭部を殴られた上、口からチェロのネックを突き刺して切り裂いた喉を弦に見立ててステージに飾られるというおぞましい事件が起きる。声帯の周りは綺麗に取り除かれオイルが塗られていた。

ウィルは薬を飲み、辛さに耐えながらプロファイリングに参加する。弓の松脂を見つけ、この人間チェロを弾くことで犯人は自分の音を生み出そうとしたのだとウィルは見立てる。そしてその演奏に拍手する死んだホッブズの幻影を観るのだった。

 

<ウィルとレクター博士のセラピー>

ウィルの見立ては、”腕の良い音楽家が新しい楽器を試している”。この手慣れた犯行は初めてではなく、この殺しは「演奏」であり、犯人は職人でもあるというもの。今回特別に劇場型の事件を起こしたのは、”自分がいかにうまく殺しをできるか、誰かに見せつけたい”からだとウィルは分析する。

 

<トバイアスとレクター博士

フランクリンは、トバイアスが自分に残虐な行為への欲求を話すのは、自分を通してそれが先日紹介したレクター博士に伝わるからだと推察する。それを聞いた博士はトバイアスの店を訪ね、ハープシコードの弦の張替えを依頼し、ディナーに招待する。

トロンボーン奏者を殺した?」と単刀直入に尋ねる博士にトバイアスは「調査員を送ってくるなら殺すだけだ、フランクリンも殺して私は消える」と返す。そして博士の切り裂き魔としての犯行を目撃していることを仄めかし、同じように世界を見る友人がほしいと言うのだった(博士は拒絶する)。

 

<アラーナとウィル>

一方、ウィルの幻聴や幻覚はますますひどくなる。コヨーテの共食いやアライグマの物音が聞こえる、と言い張るウィルをアラーナは心配する。ずっと部屋でふたりきりになることを避けていたアラーナ(「今はだれともデートなんて考えられない」)にウィルはくちづけるが、特殊な関係だからうまくいくはずがない、あなたに精神科医としての興味があるから分析せずにはいられないのだとアラーナは気持ちを受け入れず、帰ってしまう。

 

ウィルは雪の中レクター博士を訪ね、アラーナにキスしたことを「お互いのために良くないからと一蹴されてしまった」と報告する。そして煙突から動物の鳴き声が聞こえたこと、何もいなかったこと、そこへ現れたアラーナに自分の混乱状態を見抜かれたと思ったこと。

頭痛、幻聴、夢遊病という己の不安定さからバランスを保とうとキスをしたのだろうと博士は分析する。「今も犯人のセレナーデは聞こえるかい?」「彼女との歌なら」。そうして博士はトバイアスの存在をウィルに告げ、恋愛の悩みから事件へと再びウィルを引き戻す(この辺意図的としか思えない)。

 

<博士とベデリア先生のセラピー>

レクター博士は「彼は私とは似ていないし世界観も違うが、私の視点に立てる」とウィルに友情の可能性を感じていることをセラピーでベデリア博士に打ち明ける。

 

<事件の展開と結末>

ウィルとFBIは博士の助言を元にトバイアスの店を訪れるが、ウィルはそこでも幻聴に悩まされ、その隙に巡査が殺される。ウィルは単身トバイアスの秘密の地下室に潜入し、もう一人の巡査の遺体を発見、自らも襲われるがトバイアスの耳を撃ってなんとか生き延びる。

トバイアスはフランクリンとの面会中のレクター博士を訪ね、「警察に問いつめられて2人殺した」と告げる。フランクリンがトバイアスを説得中にレクター博士は背後から彼をひねり殺し、トバイアスとの死闘の末に彼をも殺す(勿論フランクリンの死もトバイアスのせいにした)。

 

すべてが終わった現場を訪れたウィルに博士は潤んだ瞳で「君が心配だった」と告げる。ウィルは「僕の世界にあなたを引きずり込んでしまった」「自分で足を踏み入れたんだ、独りじゃないのは心強い」と語る唇の端からは血が流れ、いつも美しく整えられている髪は乱れていた。

 

その後、フランクリンの死に責任を感じてしまう、と語る博士(本当かよ)にベデリア先生は「誰しも自分の命の責任は自分で負うしかない(自分も襲ってきたので殺した患者の死にまで責任は負えない)」と語るのだった。目の前の相手が殺人鬼であるとも知らず。

 

***

 

※通常このブログ用に見返す時は字幕版にしているが、今回は吹替で観てみた。ながら見はしやすいし二人共実に声がいいけれど、解釈は限定される気がするのでこれからも字幕メインで観る気がする。

 

今回のテーマは「(誤った)友情」。「サイコパスには何をしているか自覚があるからね」「(フランクリンは)友人を間違えただけ」と語る博士の説得力がすごい第8話。起きる事件も前代未聞のエグさであるがウィルの壊れ方もひどくなってきている。 

 

それにしてもサイコパス同士はひかれ合うのか(「私は細身だしね、腸が丈夫だ」は笑える)、トバイアスは友情を(おそらくは一目観てサイコパス仲間と見抜いた)レクター博士に求めて彼にアピールするために劇場型犯罪を犯すが結局は殺し合いとなる。なんだかんだ言ってこのシリーズで一番アクションしてるのは博士である。 

いずれにせよ巻き込まれるウィルはたまったものではないが、本人もいきなり訪ねてきて「アラーナにキスした」とか報告してくるしどっちもどっちという説もあるしわんちゃんたちは今回もとても可愛い。

 

この頃からベデリア先生のことも操ろうと事あるごとにセラピー(受ける側)を装ってかつて患者に襲われてその相手を殺したことを持ち出しているのも、後から考えると周到である。

 とりあえず今のところ博士は一貫してウィル以外からの友情は拒絶している(ベデリアには拒絶されている)が、ウィルにはいよいよ友情を感じ始めているらしい。というか愛か。恐ろしい話である。

 

【ハンニバル】S1E7:ソルベ

■あらすじ

アカデミーで切り裂き魔について語るウィル。切り裂き魔は”3匹”ずつ殺害し、1年半後にまた別の3匹が殺された。切り裂き魔にとって被害者は人間ではなく、豚であるとウィルは分析する。臓器を切除して食べていることが特徴で、医学の知識があり、残虐である。

そしてミリアム・ラスは被害者の医療記録を調査中に失踪、9人目の被害者と思われたが遺体は発見されず、2年後の現在、犯人の導きによって腕が見つかった。一貫して劇場型の犯罪を繰り広げる切り裂き魔を止めることは出来るのか。

 

一方オペラを鑑賞するレクター博士。涙さえ浮かべてアリアに聞き惚れる彼を見つめる患者フランクリンがいた。昔のようにディナーパーティーを主催して欲しいと知人にせがまれているところに現れた彼は友人のトバイアスを博士に紹介するのだった(彼は次回で重要な役割を果たす)。

 

そんな中事件が起き、ジャックに連れられてウィルは現場へ向かう。切り裂き魔ならあと2人殺して姿を消す、とジャック。ミリアムの腕はあなたへの挑戦、とらわれすぎては駄目だとウィルは助言するが、ジャックはあくまでも切り裂き魔が犯行を再開したと考える。

 

《今回の殺人事件:切り裂き魔を思わせる惨殺事件》

手術を施し、さらにその縫合箇所を手で開いているかのような残虐な犯行で、腎臓が奪われている。

ウィルの見立てでは鎮静剤を飲まされている内に腎臓を奪われた被害者は目を覚まして犯人と格闘、心臓が止まったのを助けようと犯人は胸を切り開いて直接マッサージを施した。

 

これは殺しではなく、命を助けようとしたもの。切り裂き魔の犯行ではなく医学生か何かが闇医者の真似をして臓器を取り出し失敗しただけだとウィルはプロファイリングする。

 

※ウィルが見立てる切り裂き魔(リッパー):

・病院で生まれてすぐ見放された可哀想な存在、周りは必要最低限の世話しかせず見殺しにしようとしたが生き残った。

・一見まともに見える、正体は誰も知らない。

 

レクター博士のセラピー(患者として&医師として)>

美しき精神科医のもとへ患者としてセラピーを受けに行く博士。「あなたはよく出来た仮面、というより人の皮を被っている」と言われる。自らの患者に「友人ではない」と告げたのと同様に、彼女からも「患者と医者であって友人ではない」と告げられるのだった。

 

その後やってくるウィルと、今度は医師としてセラピーを行いつつ「私は君の精神科医なのか(友人なのか)?」と尋ねてワインを一杯開ける。赤でも白でもなくロゼが今日の博士の気分らしい。白黒(医師と患者/友人)をつけないということか。

2人はセラピーでまた事件の分析をし、博士の助言でウィルは「臓器移植(のための売買)」の可能性に思い至る。一方博士は久々の晩餐会の支度にとりかかり、「食材」と「レシピ」を捜すのだった。

 

<第二~以降の殺人事件>

スクールバスの中で、上下まっぷたつに切断された遺体が発見される。腎臓と心臓を切除されており、前回の事件のやり直しだと見立てる局員達にウィルは別人の犯行だと見立てる。こちらは切り裂き魔の仕業だと。

 

さらに凶行は続き、それぞれ違う臓器(肝臓や胃や膵臓、肺、脾臓まで)が奪われた複数の遺体が発見され捜査は暗礁に乗り上げる。臓器売買と見立てたのは誤りだったのか。ウィルは今回犯人は2人いて、少なくとも片方は切り裂き魔であると分析する。

 

レクター博士とウィル>

セラピーの時間を忘れていたウィルをFBIアカデミーまで迎えに行く博士。目を開けたままアビゲイルの白昼夢を見るウィル。悪夢の原因は殺人事件だと博士は言う。「無礼な行いへの報い」「臓器を取ったのは分不相応だから」という分析で切り裂き魔への2人の意見は一致する。一方ミリアムの腕については彼女自身でなく、ジャックを嘲笑っているのだと。効果はてきめんだった。

 

<事件の結末>

事件の一報を聞いて去る民間の救急車の映像が発見される。犯人とみなしてウィルとレクター博士はジャックらと共に該当の救急車を追い、腎臓を奪おうとしていた犯行の現場を目撃する。犯人は医学生だった。居合わせたレクター博士が止血を行い、最後の被害者の命は助かる。

 

事件が終わり、犯人シルベストリと切り裂き魔は無関係であること、患者が助かったことを告げて博士の晩餐会を辞するウィルと、その背中を満足気に見送るレクター博士だった。そうして、残酷な晩餐会は大盛況のうちに開かれる。

  

***

 

サイコパスに好かれるといえばウィルの特技であるが(本人は大迷惑)、今回は博士にもストーカーやファンが目立つ第7話。オペラに聞き惚れる姿は美しい。2年前以前の切り裂き魔の犯行を説明するウィルのシーンの後に「昔はよく素敵なパーティーを開いてくれた」と友人に言わせるのが恐ろしくも品の良い演出である。今回は料理シーンも多く、博士の美しい姿を堪能できる。

 

普段はウィルに友人になろうオーラ全開で擦り寄っている博士が「外でのあなたを知りたい、友達になりたい」とせがむ患者に(ウィルの時とは正反対で)距離を取り露骨に迷惑そうな顔をするのも面白いシーン。

 

「切り裂き魔は被害者の舌を切り落として聖書のしおりに挟むような奴」「残酷さの中にも気品があって優雅だ」というウィルの詩的かつグロテスクな表現が印象的。彼はこうして犯人を抽象的かつ具体的に共感してプロファイルしているため、今回の事件にはそんな印象がない→切り裂き魔の犯行ではないと唯一見抜くことが出来る。

本来なら現場に出るべきではない繊細な神経の持ち主なのに、だからジャックが手放さないのが切なくも狂おしいところだ。このシリーズは善を求めるジャックと堕天使であるレクター博士が純粋なウィルを引っ張り合う物語でもある。

 

また今回、本筋には直接関係ないがアラーナがレクター博士の料理を手伝いながら会話するシーンがあり、ウィルの話題に触れないようにしたり「彼の存在を隠していた?」と尋ねたり、「生徒には昔(君のことを)恋人だと思われた」など、巧みに人心を操る博士の会話術が堪能できる。それにしても例の「無礼な豚名刺リスト」にだけは入れられたくないものである。

 

そしてウィルがセラピーの約束の時間に少し遅れただけでそわそわするレクター博士。こういうところがあるから憎めないのであった。

  

 

【ハンニバル】S1E6:アントレ

■あらすじ

病を装った囚人兼患者による凄惨な事件が勃発し、ウィルとジャックは現場へと向かう。

 

《今回の殺人事件:看護師惨殺事件》

精神障害犯罪者病院に妻殺しで収容されていた元外科医、エイブル・ギデオンが看護師を惨殺する。

身体中に器具を突き刺したその犯行から、記者のフレディ・ラウンズや担当医のチルトン博士(以前切り裂き魔事件に捜査協力していた)は彼を連続殺人鬼「チェサピークの切り裂き魔」だと断定。切り裂き魔が捕まらなかったのは、2年間この病院にいたからだと推察する。

 

<ジャックの回想:ミリアム・ロスについて>

2年前、FBIアカデミーの生徒だったミリアムをジャックは「切り裂き魔」の捜査担当に抜擢し、事件に専念させたがその後失踪。おそらくは死亡したと思われる彼女のことをジャックは思い出さざるを得なかった。

 

<ギデオンとの面会>

以前にも診察したことがあるアラーナと、ウィルが別々にギデオンと面会する。ギデオンは自らを切り裂き魔だと仄めかせるが、今回の事件は死後に遺体が傷つけられており、生前に傷めつける切り裂き魔とは細部が異なっていた。ギデオンは「看護師を殺したかっただけ、この犯行で自分が切り裂き魔であることを証明したいわけではない」と語り、ウィルはそれが別の「誰か」の望みであると分析するのだった。

 

面会や現場検証、検死を経てもウィルは今回の事件を切り裂き魔の犯行と感じない。もしも偽者ならば本物が黙っていないだろうと考える。

 

<博士とジャック、そしてミリアム>

妻のことが気がかりでレクター博士を遅くに訪ねるジャック。避けられない妻の死と、かつて自らのせいで失った研修生ミリアムのことが忘れられない。彼女は犯人はサイコパスであり、外科医ではないかとプロファイリングしていた。

 

そんな中、深夜ジャックの自宅に死んだはずのミリアムから電話がかかってくる。「助けてください、大変な間違いを犯しました。ここがどこだかわからない、こんなふうに死にたくない」と怯えて嘆く声は、しかし通話記録には一切残っていなかった。切り裂き魔は彼女の声を録音していたのだとジャックは戸惑い怒りを露わにする。

病院から電話はできない、ギデオンは切り裂き魔ではないのか。ミリアムの遺体は見つかっていない、彼女は本当に死んでいるのか。本物の切り裂き魔が自らの存在を主張しているのか。プロファイリングに悩むウィルはまたも黒い牡鹿の幻覚を観るのだった。

 

<ジャックの作戦>

切り裂き魔を刺激し、本物をおびき出そうと狙うジャック。怒らせるにはラウンズ記者と手を組み、ギデオンを本物の「チェサピークの切り裂き魔」に仕立てようと考える。思惑が絡み合いながらも協力するFBIとラウンズ。

 

そうして発表された、”外科医エイブル・ギデオンは妻を殺しただけでなく、おそらく彼こそが「チェサピークの切り裂き魔」である”と断定した記事をタブレットで眺めるレクター博士であった。

 

<ジャックとギデオンの面会、そして二度目の電話>

2年前の捜査時にミリアムとも接触していたことを認めるギデオン。感謝祭での妻殺しでは臓器を取っていないこと、自分が切り裂き魔だというなら何故急に正体を明かしたのか、ミリアムの遺体はどこなのか、質問はうまくはぐらかされる。そんな面会中に、ジャックの自宅から再びミリアムを名乗る声で同じメッセージの電話がかかってくる。

 

ジャックの寝室からミリアムの頭髪、指紋が見つかる。電話の相手はジャックがミリアムの死に責任を感じていることを知っている、とウィル。令状を取らずに医療記録の捜査を行うことを提案したミリアムの報告書を見て、当時ジャックは彼女に講義に戻るよう命令していたが、講義をサボって外科医に会いに行くことをほのめかす彼女を止めなかったのだ。

 

<今回の博士のディナー>

模範囚だったギデオンは今回誰かに操られているのではないかと考え始めるアラーナは、チルトン博士とともにレクター博士のディナーに招かれ仔牛の舌料理を堪能する。(怖いよ)

 

考えられる可能性:

1)ギデオンが切り裂き魔である

2)彼はそう思い込んでいる(思い込まされている)

3)彼は大嘘つきである

 

3つの可能性のうち、ギデオンを切り裂き魔だと断定するチルトン博士。実は以前彼はギデオンに切り裂き魔の話をしたことがあり、自分が疑い始めたことが彼を2年ぶりの凶行に走らせたのかもしれないと考えていた。

一方アラーナは2番、その面会の中でチルトンが彼にそう思い込ませたのではと尋ね、レクター博士は抑圧されていた記憶を自ら思い出したのではないかと分析する。少なくとも表面上は。(実際にはその後チルトン博士に「私はブルーム博士より寛容だよ」と彼の洗脳を容認する言動をほのめかせている)

 

<ミリアム(の一部)の発見>

寝室にいたのは本物の切り裂き魔であり、ギデオンとは別人であるとジャックは考える。ミリアムの過去の足取りを追ってたどり着いた天文台には、携帯電話を握らされたミリアムの左腕が置かれていた。そしてメモには「What do you see(何が見える)?」の文字。全てはもう終わっていたのだった。

 

<2年前の真相> 

ミリアムは当時医療記録をもとに、外科医時代に関わった被害者の話をレクター博士に聞きに来ていた。そして証拠(スケッチ)を見てしまった彼女を博士が襲っていたのである。が、彼女が博士を訪ねていたことさえ誰も知らない。

 

***

 

サイコパスに人気なだけでなく精神犯罪医学界でも有名人だったウィル。ぜひお話させてくれってどんだけどこでも変わり者に人気なんだって話ですが本人のうんざり顔が受ける第6話。ウィルの活躍はあまり(というかほとんど)なく、ジャックとミリアムの過去回想、切り裂き魔の正体が話の主軸となる。

そしてギデオンチルトン博士がこのサイコドラマに初登場する。いつでもスタイリッシュで社交的、天才外科医としても精神科医としても皆から評価されるレクター博士にコンプレックスバリバリのチルトン博士(あげくに手柄欲しさにギデオンに自らを切り裂き魔だと思い込ませたのでは?)だが、この時はまだ健康そのものである。

 

毎度切り裂き魔というより突き刺し魔ではないかと思うが臓器を切り裂いて取り出しているから切り裂き魔なのだろうか。。今回博士は表立ってはあまり動かず、見え隠れする「チェサピークの切り裂き魔」としての影が恐ろしい。

「一瞬彼女が生きていると思わせ」て腕を見せるという残酷なやり方でジャックとFBIを弄んだのは、本物の「切り裂き魔」である博士からの怒りの現れだったのだろうか。

 

面白かったのは異常者の選ぶ職業。CEO、弁護士、聖職者、第五位は外科医。第六位はジャーナリスト、そして第七位は捜査関係者。ものすごくラウンズをあからさまに嫌って嫌味を応酬する大人気ゼロのウィルちゃんであった。(あそこまでいろいろ書かれたら無理ないか)「異常者同士協力しましょ」と抜け抜けと笑うラウンズ、どうにも憎めない赤毛の悪女である。

 

(それにしても博士がタブレットを観る距離、それもうちょいだけ離したほうが老眼にはいいのでは? と思ってしまう老眼萌えであった)

 

 

【ハンニバル】S1E5:コキーユ

■あらすじ

現場に出るようになってからウィルの精神は混乱し(大いにハンニバルのせいでもあるが)ついに夢遊病に苛まれるようになる。大きな黒い牡鹿の幻影を見ながら彷徨っているところを発見され、自身の異常を恐れた彼は早朝からハンニバル・レクター博士の自宅兼診療所を訪ねる。

 

トラウマが身体の制御を奪っている、と分析する博士。現場に出るようになったせい、と遠回しにジャックの責任を囁くのであった。

 

《今回の殺人事件:天使に見立てた「エンジェルメイカー」事件》

死体に加工を施し、背中を切り裂いて翼に見立てて広げ、祈りを捧げる形にした異常な殺害現場が発見される。釣り針で天井から身体と翼を固定しており、発見された遺体は男女2体。

現場の吐瀉物の分析から、犯人は脳腫瘍であり寝ている間の死を恐れている、見守ってもらうために殺した被害者たちを変身させて”天使”に高め、眠る自分のために祈らせたのだとウィルは分析する。

 

<クロフォード夫妻と博士>

美しい妻ベラを伴って博士の食卓に招かれるジャック。(そのフォアグラは何の肝臓なのか…「傲慢な豚を使った」という台詞が怖すぎる)早速勝手に人の匂いを嗅ぐ博士は匂いで彼女の病気(肺癌)にひそかに気づくのだった。そして後日、夫人ベラは博士のもとへ患者として訪れる。

 

<博士とウィル>

脳に腫瘍が起きると幻覚を見ることはある。しかしエンジェルメイカーは死に抵抗し神になろうとしているとふたりは分析する。ここでも「君にも見捨てられた経験が? ジャックやFBIに何を期待した?」と事件を通してウィルの心を少しづつ操る博士。「ジャックには見捨てられていない」と語るウィルに対し、「深入りさせないと言ったのに君を制御できていない」、だから夢遊病になったのではと囁くのだった。

 

※博士の狙い:セラピーを通してウィルからジャックへの絶対的な信頼にヒビを入れることと思われる。 ウィルに「彼から遠ざける気ですか」と反論されるとあっさり「犯人を分析する手助けさ」と話をそらす辺り相変わらず絶妙である。

 

<さらなる被害者、ジャックとの行き違い>

そうして第二の殺人事件がエンジェルメイカーによって起きる。吊るされた遺体のそばに犯人のものと思われる睾丸が摘出されており、自らを性別のない天使にしようとしているのではないかと分析している最中、現場でついに「自分でも分析したらどうだ」とジャックと揉めるウィル。博士のセラピーの(悪い)効果が現れているのか。

 

その後第一の事件の被害者夫婦は悪名高き指名手配犯、第二の被害者も重罪犯だったことが判明する。犯人は神の仕事をしているとウィルは分析する。悪魔から天使を作り、その場で安らいで眠るのだ。

 

<再び博士とウィル>

ウィルの夢遊病は悪化し、目覚めれば屋根の上に佇んでいた。博士のもとを訪れ、また事件の話になる。犯人は善悪を見分けられる(と思い込んでいる)。脳が彼に悪さをしていると語るウィルに、犯人と君は似ている、ふたりとも無限の安らぎを求めていると博士は言い、そっとウィルに背後から近づいて彼の匂いを嗅ぐのだった。安物のローションの香り、よく頭痛がするだろうから変えてみてはと囁く博士だった。意味不明もここに極まる。

 

<事件の結末>

ついにエンジェルメイカーの容疑者を突き止めるジャック達(毎度どこから見つけるのかが謎だが影で頑張っているのだろう)。釣りのライセンスを持つ男、病で独りになりたがり家族を遠ざけたエリックだった。(その話を聞きながら自らの妻にも当てはまることに気づくジャックが可哀想である)

妻の話から、子供の頃彼が火事にあい、「天使に守られた」と語っていた農場へと向かうジャックとウィルは、そこで彼自身が天使となって死んでいるのを見つけるのだった。

 

現場でこれ以上は自分に悪影響が大きすぎるとジャックに打ち明けるウィル。では教室に戻るのか、防げたはずの事件が起きたら辛いぞ、辞めたいのなら辞めろと非情に宣告するジャックだったが、妻の病の真実と彼女の考えを知り、戻ってきたウィルを受け入れる。

 

***

 

アビゲイルとアラーナは一回休み、代わりにジャックと病気を隠している妻、そしてジャックとウィル(に溝を作らせようとする博士)の関係が事件の傍ら進みます。「家族」がテーマだった前回に続き、今回は「病」「孤独」。自らの不治の病気を知った人間は独りになりたがるものなのか。

 

冒頭から夢遊病(クソ寒そうなのに相変わらずTシャツとパンツ1枚)のウィルを心配してついてきているウィンストンがめちゃめちゃかわいい第5話。そして最大の見所、寝起き(!)のレクター博士下ろした前髪とローブ姿、ここだけで100万ドルの価値がある回である。人の迷惑を顧みないウィル。

この時も「ジャックは自分を大切な客人に出す壊れやすいティーカップに例えるけれど、古いマグカップになったような気分だ」とぼやくウィルに、それは悪魔(=ジャック)と契約したせいだ、と囁くレクター博士、相変わらず細かいポイントで疑念や考えを植え付けていくのが上手である。今回にかぎらずセラピーのシーンはあまりにも静かかつ巧妙すぎて何度見ても飽きることがなく新しい発見があります。

 

そして伝説の背後から匂い嗅いどいてローション言い当てる事件、本当に恐ろしい男である。

 

 

【ハンニバル】S1E4:ウフ

■あらすじ

お互いの秘密を守る約束を交わし、アビゲイルを匿うレクター博士

そのセラピーを受けるウィルはマリッサの遺体を見て罪悪感を感じたと語る。自分が殺した気分になった、ホッブスを分析するうちに近づきすぎた。ホッブスと共に生きている気さえすると、奴の死後も取りつかれているウィル。

 

《今回の殺人事件:一家惨殺事件》

家族のディナーの席で起きた一家4人の殺害事件。全員が頭を撃ち抜かれてテーブルに突っ伏している姿で見つかった。そしてその家では1年ほど前に息子の1人が失踪していた。

 

これは招かれざる客による犯行。犯人は共にテーブルに付き、脅して一家を支配していたとウィルは見立てる。家族は一斉に処刑されたが夫人は最後に撃たれたと分析し、ジャックに見えてくるのは「家族観」だと語る。一体誰の?おそらくは犯人の。

家に飾られているのはどれも作り笑顔の子どもたちの写真だとウィルは語る。夫人だけ抵抗した跡がないのは犯人を許した。母親だからだと分析する。

 

一方ソーセージで犬たちを手なづけてウィルの家に不法侵入(違ったけど)するレクター博士。犬さえ支配する姿はさすがである。七匹もいるのにまったく警戒していない犬たちがかわいい(むしろ懐いている)。忍び込んだ家で堂々とピアノを弾き肌着の引き出しを開けるなどし、完全に不審者であるがここで博士は後の重要な証拠となる「疑似餌(毛鉤)」の細工にとりかかるのだった。

 

<アラーナとアビゲイル、そして博士>

訪ねてきたアラーナに私は異常だ、もとには戻れないと語るアビゲイル。病院での暮らしも支援グループにもなじめない。

博士のもとを訪れるアラーナ。博士はアビゲイルを退院させるべきだと語るがアラーナは安全な場所で自分を見つめなおすべきだと反論する。博士は「同僚の情熱に従おう」とあっさりと引き下がって油断させる(人心掌握術すごい)。

 

<博士とウィル>

さらなるセラピーは互いの家族について。母は難しい人でウィルの家は貧しく、父はボート修理の仕事でビロクシやグリーンビルへ引っ越しばかり、どこでもよそ者だった。家族に縁遠い自分たちは孤児となったアビゲイルと共通点が多いと博士は語る(本人も幼い頃に両親を亡くしている)。家族の話はなじめないとウィル。「だから家族を作った?」「捨て犬と暮らしているだけです」。家族を作ったのはアビゲイルのことだと博士は指摘する。

 

<ジャックと博士>

ディナーを食べながらウィルを心配するふたり、(ジャックはまだアビゲイルを疑っている)子供の殺人事件を見て、FBIに入るずっと昔の子供の頃を思い出しているのだろうと博士はウィルを分析するように語る。父親との何気ない時間が荒波に耐える錨になる、彼には錨が必要だと。

 

<さらなる事件>

授業中にカチ込んでくるジャック(ウィルちゃんご立腹)、13歳の行方不明の少年コナーと現場の指紋が一致した、こちらも同じく3人子供がいる家族。またも殺されているのではないかというウィルの見立て通り、《第二の事件》が発見される。コナーを含む一家が居間で殺されていたのだ。

 

しかし今回はミスがあり、犯人がその場に2人いたことがわかる。おそらく暖炉で見つかった焼死体が失踪した少年コナーであり、母親を殺す際に現場で動揺したため真犯人に撃たれて燃やされたのだろうとウィルは見立てる。さらに今回の事件では、1年前メイン州で起きた13歳の少年の失踪→母親が殺された事件と同じ銃が使われていたことが明らかになる。

 

<博士とウィル>

一話にして3回目のセラピー。アビゲイルにクリスマスプレゼント(拡大鏡)を用意するも「どうかしていた」と動揺するウィルがかわいい。「何故怒る?」「あの少年達に何もしてやれない、もう家族を戻してやれない」アビゲイルもそうだ、彼女の道を見つけてやるのが我々の責任だと博士。事あるごとにアビゲイルについて語ろうとするのは何の目的なのか。

 

<アビゲイルと博士>

病院にまでアビゲイルの面会に行く博士。悪夢を見るからここでは寝たくない、マリッサが私にニコラスを殺した時の写真をメールしてくる悪夢だとアビゲイル。彼女に、父と同類であることを暴かれるのが怖いのだと怯える。唯一話せるのは博士だけ。たった一つの嘘だけでいい、私といる時はそれさえ必要ないと慰める博士。

 

アビゲイルを自宅に連れ帰り、料理を振る舞うレクター博士。どの大学にもパパの犠牲者がいる。FBIに入りたいと語るアビゲイル。犯人の娘じゃ無理よね、と嘆く彼女に、「もう彼の娘だとは思うな、悩まなくて済むとしたらどうだ?」とキノコの幻覚作用(シロシビン)でトラウマの原因をたどり前向きな記憶を引き出すことで悪夢から救ってあげると提案する(要は危険ドラッグなのでは…)。幻覚作用のあるお茶を素直に飲むアビゲイル。

父との狩り、ニックの殺害、割れたティーカップ。シロシビンにより幻覚を見るアビー。博士との最初の食事はソーセージと卵。

 

<事件の真相と結末>

孤独を抱えている少年の失踪→母親または家族全員の殺害、というパターンの連続殺人。主犯は擬似母親を演じている女である。800キロずつ殺害現場が離れている、未成年、兄弟の真ん中、裕福な家庭を狙っている。どんな子になら従うかを見ぬいて行動しており、彼らの中では新たな絆が生まれている、でなければ餌食になるとウィルは分析する。

 

女は子どもたちから愛されたい、家族が邪魔。だから誘拐して家族を殺させている。次の犯行はプロファイリングによりノースカロライナで失踪した少年の家族と見抜くウィル。

結果、現行犯で女は射殺され、少年は確保されるのだった。「本当の家族を作ろう」と言われたと少年は語り、ジャックには理解できない。

 

アビゲイルに対する行為によってアラーナの怒りを買い、これまた素直に謝る博士。「アラーナ、君が正しかった。まだ外出は早かった」不安そうだったので薬を与えたと語り、3人でディナーの食卓を囲むのであった。アビゲイルは博士とアラーナに両親の幻影を見て、「家族がみえる」と呟く。

 

一方家族について考え、子供を持つのは遅いだろうかと妻に尋ねるジャック。妻はつめたく「私にはね」と答えるのだった。

  

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今回は「家族」がポイントの第4話。トラウマに苦しむのは力がないもの→力を取り戻させたい。ここでも「受け入れること」「力を持つこと(支配)」にこだわる博士。あくまで自分以外ではアビーとウィルにそれを強いているのが興味深い。巧妙にアビゲイルを支えている(君がソシオパスではなく生き抜いたからだ、など)が愛情も感じなくはない。

 

そして問題の家宅侵入ですが、なんだウィル、留守の間犬の世話を頼んでたのか! 不法侵入にしか見えなかったぞ! 博士があやしすぎるのがいけないんですが実際あやしいことやってるからいくない。

 

そしてディナー第二弾のジャックと博士、本当にうさぎの肉??? 違うっぽいよ~~怖いよ~~

 

【ハンニバル】S1E3:ポタージュ

■あらすじ

アビゲイルは猟奇殺人(食人)犯であった父から狩りを習っていた。殺し方、捌き方、どんな気持ちで食べればよいか。食べて敬うのだ、そうでなければただの殺しだと父は語っていた。その夢を見て、昏睡状態からついにアビゲイルは目覚める。

 

いまだ7体の遺体が見つからず、アビゲイルを共犯だと睨んでいるジャックとアビゲイルを思いやるウィルに挟まれるアラーナは彼女が目覚めたことをウィルに知らせる。心配するウィルにあの子の家族の代わりにはなれない、犬を拾うのとは違うと告げ、自らがアビゲイルを診察するアラーナだった。

 

アラーナとの面会で母は火葬、父は異常犯罪者として処理されたことを確認し、家を売りたいと語るアビゲイル。感情を表に出さず人を操ろうとする彼女に、ウィルを会わせようとジャックは画策する。

 

アカデミーで模倣犯について語るウィル。この模倣犯は知的なサディストであり、ラウンズのサイトで「ミネソタの百舌」について熟知したうえで、それを芸術の域に高めて自らのほうが優秀であると証明しようとした。何者かがホッブズの最後の凶行の直前に電話をかけており、その人物こそが模倣犯であると確信するウィル、その分析を見つめるレクター博士

 

一方診療所までアビゲイルに会いに来るラウンズ記者。「イカれた捜査官」とウィルの話をしていたところで当人とレクター博士が現れて名刺を奪う。ラウンズは帰らされ、ウィル、レクター博士、アビゲイルの3人は運命的な再会を果たす。お父さんは間違っていたが君は問題ないと言い聞かせるウィルに、悪夢を見ることを打ち明けるアビゲイルだった。力になると言うふたりに、アビゲイルは家に帰りたいと言う。

 

再びラウンズの記事のネタにされたウィル、ジャック、レクター、アラーナの4人はアビゲイルを家に帰らせるべきかで意見が分かれ、ジャックはレクター博士の意見を採用し、帰宅を認める。

 

ウィル、レクター博士、アラーナとともに自宅に戻ったアビゲイル。「パパになるのはどんな気持ち?」と尋ねる彼女に、「彼の影を追いかけるようだ」とウィルは答える。そして非通知だったあの模倣犯からの電話の声に心当たりはないかという話題になり、犯行を再現しようとアビゲイルは言うが、前に進むべきだとアラーナに言われて実現はしなかった(「電話の男」の役はレクター博士に与えられるはずだった)。

 

※アラーナ博士の豆知識メモ:フォリ・ア・ドゥ。フランス語で妄想を共有すること。

 

自宅に尋ねてきた親友マリッサと久々に再会するアビゲイル。そこへ犠牲者キャシー・ボイル(実際には模倣犯に殺されている)の兄であるニックが現れる。アビゲイルが妹をおびき寄せる餌として共犯関係にあったと言いがかりをつける男を親友が追い払うが、アビゲイルは悪夢に苦しめられる。そしてウィルもまた、自らがアビゲイルを切り裂く夢にうなされる。

 

父は自分の代わりに他の子を殺した、私が殺されていれば他の子は死なずに済んだのではないかと嘆くアビゲイル、その目の前でついに新たな殺人事件が勃発する。

 

《今回の殺人事件:鹿の角串刺し》

ホッブズの狩猟小屋の2階で、アビゲイルの親友マリッサが鹿の角に串刺しにされて発見される。

 

顔に殴られたあとがあり、皮膚片や血が付いている遺体はレイの模倣犯の仕業とは思えない点があったが、同じように被害者を嘲笑っているとしてウィルは「キャシー・ボイルと同一の模倣犯だ」と判断し、レクター博士キャシーの兄が妹とマリッサを殺したと分析を披露する(実際にはキャシーを殺したのは博士だが、故意に捜査を誘導している)。

 

自宅でクッションに人の髪の毛が入っている事に気づいたアビゲイルの元へ「彼女を殺していない」と弁解に来たニック。揉み合いの末、アビゲイルはニックを殺してしまう

居合わせた博士は「これを知られたらお父さんの共犯だと思われる。君を助けよう」とニックの遺体を隠すことを提案するのだった。

 

すべてをニックの仕業として行方不明に仕立てた博士は、アビゲイルを自らの家に匿う。「私が彼を殺して嬉しい?」「殺さなければ君が死んでいた」「あなたなんでしょう、パパに電話したのは」。

 

父の凶行のきっかけとなった電話の主が博士だと知りながら、「君のパパとは違う、誤解を招くミスをしただけ」と語る彼のもとにとどまるアビゲイルだった。

 

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いつもおしゃれな博士ですが、チェックのウールジャケットの下にニットのジップアップ、その下にシャツとネクタイという素敵なハイキングスタイルが見所の第3話。実に巧みに捜査を誘導する紳士的な姿が見られる。出番もどんどん増える博士、がんばっていただきたい。

 

 

【ハンニバル】S1E2:アミューズ・ブーシュ

■あらすじ

ウィルが連続食人鬼「ミネソタの百舌」ことホッブズを射殺し、事件は解決したかに見えた。ジャックは娘も共犯の可能性を示唆するが、狩猟小屋を観たウィルは彼の単独犯であると推察する。ただし、他にも誰かがこの小屋に来ていたことに気づく。

 

英雄と讃えられる一方で、ホッブズを殺してしまったことによりウィル本人も今回の事件に深く影響を受けていた。また模倣犯の存在(実際にはウィルのためにレクター博士が行い、肺を取り出して食べている)も忘れることは出来ない。

 

ホッブズの娘アビゲイルの病室に泊まりこむウィルを心配するアラーナとジャックだが、犯人を射殺した経緯(犯人1人に10発も撃っている)が査問会で認められ、ウィルはレクター博士のセラピーを受けることを条件に現場に復帰することになる。

※かつてウィルは殺人課にいたことがあったが、人を撃つことに抵抗があり辞職した過去がある。また、いまだに射撃は下手で練習場に通っている。

 

かくしてセラピーが始まる。強すぎる共感力によって犯人と同化してプロファイリングを行い、その代償として常に苦悩し続けるウィルにハンニバル・レクター博士はあくまで紳士的に手を差し伸べる。

 

博士のみごとな擦り寄りポイント

・頭のなかを覗かれるセラピーを嫌がっており自らも精神分析に詳しいウィルに対し、初回であっさりと「君の精神鑑定結果は正常、責任能力もある」と分析は終わったふうに話して安心させる

・あくまでも「ジャックの君に対する罪悪感を消すために」形式としてセラピーを行うのだとして、「そして我々は仕事抜きで話せる」と友人関係として歩み寄る

・「私もアビゲイルには責任を感じている、彼女の運命を変えてしまった」とウィルの罪悪感を認める

・アビゲイルもホッブスの共犯だと考えるジャックの意見を「低俗」と切り捨ててウィルに同調する

 

そんな中、あらたな猟奇殺人事件が発覚するのだった。

 

《今回の連続殺人事件/生き埋め・人間キノコ栽培

土の中から発見された9つの裸の遺体からは無数の茸が生えて、まるで”畑”の様相を呈していた。被害者達は意図的にしばらくは生き埋めにされ、チューブで栄養を点滴し、土には肥料が与えられていた。

 

現場で犯人に同化して分析していたウィルは、その最中に自らが射殺したホッブズの幻覚を見ておののく。一方、犯罪特集サイトを運営する記者のフレディ・ラウンズは関係者を装って現場に近づき、プロファイリングを行うウィルを目撃して噂を集めていた(ホッブズの狩猟小屋に忍び込んだのも彼女である)。

 

セラピーで現場復帰は早かったのかもしれないと語り、「自らも殺人を犯したから、殺人者への共感が辛くなったのか」というレクター博士からの問いに頷くウィル。博士はジャックには報告しないと答える。

 

犯人は被害者達を出来る限り生かして、茸を育てるための肥料にしていた。何か全く新しい繋がりを求めていたのではないかとウィルとレクター博士は分析するが、そのセラピーを患者を装ってラウンズは盗聴し、レクター博士に見抜かれて消去させられる。 

しかしラウンズは自らのサイトにウィルのことを「壊れた心で犯人を追う男」として記事にしてしまう。それが今回の事件に大きな影響を及ぼすとも知らずに。

 

親しげにディナーを共にしつつウィルやジャック自身について語るジャックとレクター博士。一方検死が進み、被害者達は糖尿病だと見ぬいたウィルは犯人は医療関係者であり、畑を掘り起こされたからにはまた作るはずだと推測する。

 

今回の犯人は薬剤師だった。同じ店でインスリンを購入した患者10人が失踪していることを突き止めたジャック達が容疑者に迫り、トランクの中から新たな被害者を生きたまま発見するが犯人には逃げられる。

その逃亡のきっかけとなったのがラウンズの記事だったことが判明し、許可無く現場を荒らしたとしてラウンズ記者を司法妨害で逮捕する。

 

犯人が逃亡する中、昏睡状態が続くアビゲイルに優しく本を読んでやるアラーナと、病室で付き添ったまま眠っていたウィルは2人で言葉を交わす。ラウンズの記事について、アビゲイルに読み聞かせていた本について。

 アビゲイルの命を救ったことはウィルの功績だと讃えるアラーナ、そしてウィルはホッブズを殺したことを後悔しているどころか、気分は爽快だと認めるのだった。

 

逃亡した犯人は開放されたラウンズに抗議しに来た刑事(リーク元)を射殺、ラウンズに「ウィル・グレアムのことを教えろ」と迫る。

ラウンズの記事を読んでウィルを自分の理解者であると考え、繋がりを求めている犯人はホッブスの娘アビゲイルのこともラウンズから聞き出し、生き埋めにしてウィルと繋げようと病院を襲う。そしてアビゲイルを攫い、ウィルに撃たれて逮捕される。

 

すべてが終わった後、レクター博士はウィルに、君を悩ませているのは殺人の欲求、つまり殺してしまったからではなく殺した時に気分が良かったことではないかと尋ねる。(殺すつもりで)犯人を撃つ気がなかったとは言い切れないと応えるウィルに、博士は言う。「殺意があったなら、それは彼を理解したからだ」。口にできないことに、声を与えるのは美しいと。

 

ホッブズを殺して気分が良かったと告白するウィルに、神も同じ気持ちだと博士は告げる。ずっとやっていること、先日も賛美歌を歌う34人の上に屋根を落とされた。

殺すことで「力を感じているのだ」と穏やかに囁くレクター博士を、不可解な瞳でウィルは見つめるのだった。

 

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ホッブズを殺してしまい、アビゲイルから両親を奪ってしまったことに苦悩しているように見えて、実は後悔はしておらず撃ち殺して気分爽快だったこと(アビゲイルには責任を感じているが)を最終的には(博士の見えない導きによって)認めるウィル。出番は控えめだがここでも博士の影響力の大きさ、人を操る能力のずば抜けた高さが感じられる2話目。

 

今回はラウンズの登場、容疑者を射殺したウィルのトラウマ、人間から培養される茸、ウィルとレクター博士のセラピー開始と要素が詰まっている。「我々は菌から進化した、だから菌に還る、君なら理解できるはずだ」と相変わらず絶好調にサイコパスに好かれるウィルである。

 

「これはセラピー? 慰め合い?」と吐き捨てた時点でウィルは大分取り込まれているが自覚していない。一方登場するなり「君はとても無礼だ」と博士に言われたラウンズ、もうすぐ死ぬかと思ったら意外とそうでもなかったですね。そしてジャックと博士の記念すべき晩餐会たぶん第一回もここ。いつも材料が気になる。

 

ウィルに「殺して気分が良かった」と認めさせ、更にそれは神(=自分?)も同じ気持ちだ(殺すことで力を感じている、神は素晴らしい)と2話からサイコパス全開の博士ですが、あまりにも上品に囁くことでこれからウィルをどこへ連れて行くつもりなのか。恐ろしい話である。